読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

古典芸能へようこそ

歌舞伎、能・狂言、文楽などの世界に魅了されて20年。 「敷居が高い」と避けられがちの古典芸能の楽しみ方を少しでも分かりやすくお伝えできればと思います。

女遊びは芸の肥やし?

先日、八代目中村芝翫を襲名予定の中村橋之助丈の不倫騒動が世間を騒がせましたね。

www.nikkansports.com

 

まあ、一歌舞伎ファンとしては、この手の話はよくあることなので

橋之助丈も頑張ってるね~」

くらいの気持ちで聞いていたのですが、世相が変わるとはこういうことかと思うのが、ネット上での結構な非難の嵐。

 

まあ今年は特に「ゲス不倫」に代表される不倫騒動が立て続けに報じられただけに、余計に叩かれ方もハンパではない感じですな。

 

そんな世相だけに、果たしてこの後、どうなることやらと思ってますと、

www.nikkansports.com

 

三田さん、しっかり対応しましたね。

 

まあ、普通の家庭なら、これで済むわけがないのですが、済んでしまうのが「梨園」と呼ばれる歌舞伎界の在り様。

 

 

「女遊びは芸の肥やし」という言葉がありますが、特に歌舞伎の世界では「男と女の色恋沙汰」がテーマになる演目も多いので、

 

「女遊びもしたことのない奴は、ロクな役者にならない」

 

と言われたりします。

(まあ、女遊びをすることの言い訳にすぎないという意見もありますが)

 

まあ、ちょっと古いところでは「人間国宝」の坂田藤十郎丈の騒動もありました。

friday.kodansha.ne.jp

当時は「中村鴈治郎」を名乗っていましたが、「人間国宝」という肩書に一目を置いていた人たちからは、ずいぶん非難されたものです。

もっとも、この時は奥さんの扇千景さんが

「女性にモテない夫なんてつまらない」

と言い放って、役者の妻の貫録を見せつけることで、大団円に終わらせてしまいました。

 

正直、今回の件もフライデーが騒ぐまでもなく、三田さん自身はとっくの昔から知ってることだと思います。

お二人の会見の内容からしても、「三田さんが橋之助丈を叱った」というのは、「浮気をしたことに腹を立てた」というより

「大事な時期に、くだらない写真を撮られてるんじゃないわよ!

あたしが恥をかくじゃない!」

という感じでしょう。

 

思えば、先代の芝翫丈が亡くなって早5年。

兄の福助丈も病気療養で歌右衛門襲名が無期限延期になってしまった今、成駒屋宗家を支えるのは橋之助丈ただ一人。

 

三田さんにしてみれば「もっと自覚を持ちなさい」というところでしょうね。

 

その三田さんも、義母、義姉がいるとは言え、実質的には「成駒屋の女将」と言っていい立場。

ましてや後継ぎとなるべき男の子を3人も生むなんて、今どきの梨園では珍しい奥さんです。

本来なら、これだけでも梨園の奥様方の中では、絶大な発言力があってもいいくらいのことをしてきた人です。

 

世間一般の評価は様々でしょうが、一歌舞伎ファンの感想としては

「この奥さんがいる限り、成駒屋は安泰!」

というところです。

 

 

中村勘三郎という役者

私が歌舞伎の世界に惹かれたのは、一番最初の記事にも書いた通り、偶然テレビで見た中村勘三郎丈の舞台です。

 

それ以前、私は当時「中村勘九郎」だった勘三郎丈のことは、たまに大河ドラマや時代劇などで見かけるくらいで、歌舞伎役者というのはほとんど知りませんでした。

 

またいずれ別の機会で触れますが、その時に見た「助六所縁江戸桜」では、ある場面だけ完全なアドリブで進行するのですが、ちょうどその頃、勘三郎丈は女優の宮沢りえさんと浮気したと大騒ぎになっていた時でした。

そしてなんと、そのネタをアドリブで茶化されたのです。

 

この時の勘三郎丈をカメラが捉えたのですが、舞台上でいまにも笑いだしそうな顔で「こんちくしょう、なんてネタしやがる」と言わんばかりの様子だったのが、今でも記憶に残っています。

 

それから勘三郎丈という人に注意を払うようになってから、コクーン歌舞伎平成中村座など、とにかく今までにない歌舞伎のスタイルを追求する姿勢に驚かされたものです。(このあたりは、他の方もおそらく同じ思いでしょう)

 

そんな勘三郎丈に直接話を聞く機会が、何度かありました。

実は私はメディアにかかわる仕事をしているので、時折舞台の制作発表などでインタビューをする機会があったのです。

 

その時の勘三郎丈は、自らの舞台の魅力について本当に楽し気にお話をされて、聞いているこちらも「ぜひ見てみたい」と思わずにはいられない不思議な雰囲気がありました。

 

勘三郎丈は東京の役者さんです。

なので、関西ではなかなか舞台を見る機会がないのですが、そんな限られた中で私はできるだけ勘三郎丈の舞台をチェックするようにしていました。

 

この勘三郎丈の十八番の一つに「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」という演目があります。

大阪の侠客、団七黒兵衛が、男としての筋を通そうとした結果、舅を殺してしまうという演目です。

元々東京生まれの東京育ちという勘三郎丈ですが、ここで演じた団七黒兵衛の大阪弁がアクセントも含めて完璧だったことに感動したものです。

後にインタビューで、友人で女優の藤山直美さんに大阪弁の稽古をつけてもらったと話していましたが、元々の出身者でないのにあそこまで完璧な大阪弁を話すのは並大抵の努力ではなかっただろうなと感服したものです。

 

平成24年12月5日、勘三郎丈の訃報が日本中に知れ渡ったとき、自分の中でここまで強烈な喪失感を感じさせた人は、他にいませんでした。

 

時は、ちょうど息子の勘九郎丈の襲名披露の真っ最中。

その日の夜の部で行われた襲名披露口上で、勘九郎丈が最後に言った言葉は、今もテレビなどで放送されるたびに、目頭が熱くなります。

 

「・・・父のことを、忘れないでください・・・!」

 

時がたち、世代が変われば、やがて勘三郎丈のことを知らない人がほとんどになるでしょう。

その舞台を見てきた私たちが、どれだけ口を極めて褒めちぎっても、やはり実際に見なければ、その凄さはわかりません。

 

しかし、同じ時代を生きて、その舞台を見た人々の心から、勘三郎丈が消え去ることは永遠にないでしょう。

 

   

歌舞伎の情報をチェックするなら「歌舞伎美人」

「歌舞伎美人」と書いて「かぶきびと」。

 

歌舞伎ファンのために歌舞伎の興行主である松竹が運営している歌舞伎情報サイトです。

www.kabuki-bito.jp

 

歌舞伎の公演はもちろん、歌舞伎俳優へのインタビューやテレビ出演情報、イベント情報など、歌舞伎ファンなら要チェックの情報が満載のサイトです。

 

ただ、一部有名俳優を除くと、松竹がタッチしない自主公演やイベントなどの情報は取り扱っていないので、あらゆる情報を網羅しているわけではありません。

 

とはいえ、特に歌舞伎初心者の方には、少しでも歌舞伎について詳しくなることができる色んな情報が載っているので、早く歌舞伎痛になりたい方にはおススメのサイトです。

 

なお、歌舞伎俳優の個々の情報をチェックしたい方は、こちら。

 

公益社団法人 日本俳優協会

 

日本俳優協会」という名前ですが、実は歌舞伎や新派の俳優さんしか所属していないという不思議な団体です。

 

やはり「歌舞伎俳優こそが、本物の俳優だ!」という気概の現れなんでしょうかね(^^;)

お手軽に歌舞伎を楽しむ-「シネマ歌舞伎」-

シネマ歌舞伎」というのは、歌舞伎の興行を取り仕切っている松竹が、舞台の様子を撮影したものを映画として系列の映画館を中心に全国で定期的に上映している試みです。

 

一般に歌舞伎の興行は、ほとんどが歌舞伎座新橋演舞場国立劇場など劇場の数が多い東京で行われているのが現状です。

次いで大阪松竹座南座を擁する関西、そして名古屋や福岡で年に1回というペースで上演されています。

東京に比べれば、関西や名古屋、福岡での歌舞伎公演は、天と地ほど公演回数の差がありますが、それも地方巡業に比べれば、まだましです。

 

なぜなら、関西、名古屋、福岡では、1か月間の公演がありますが、地方巡業の場合、ほとんどが1日、2日程度で次の巡業地へ移動してしまうからです。

なので、地方にお住いの歌舞伎ファンにとっては、年に一度、それも限られた日にしか近場で歌舞伎を見ることができないことになります。

また基本的には東京の歌舞伎座での公演が中心になりますので、地方巡業に参加する歌舞伎役者は、襲名披露でない限り、役者の数もネームバリューも、ちょっと「格下」感が否めません。

 

しかし、地方から毎月はるばる東京の歌舞伎座まで足を運ぶのは大変です。

そもそも歌舞伎の公演チケット自体が、結構いい値段です。

東京からの距離次第では、日帰りが無理な場合もあるでしょうから、交通費・宿泊費・チケット代を合わせると、芝居を見に行くだけのことが、ちょっとした旅行になってしまいます。

 

 

「歌舞伎は日本が誇る伝統芸能の一つ」と言われますが、このような現状では、なかなかすそ野が広がらないのも無理はありません。

 

そこで、既存の歌舞伎ファンのみならず、新規ファンの開拓にも一役買うべく登場したのが「シネマ歌舞伎」なのです。

 

www.shochiku.co.jp

 

実際の舞台公演をHDカメラで撮影し、映画館の大スクリーンで観劇する。

撮影という手法を使っていますから、役者さんの顔のアップなど、生の舞台を見ていても分からないところまで見ることができるというのも、売りの一つです。

 

チケット料金も、一般で2,100円、学生・小人で1,500円と、普通の映画よりはちょっと高いですが、実際の歌舞伎公演を見に行くよりは、はるかにお安く見ることができます。

 

現在すでに第26弾まで作られており、「月イチ歌舞伎」という形で、毎月いろんな作品が月替わりで上映されています。

今月はこちらの作品。

youtu.be

夏らしい怪談物の作品「怪談牡丹灯籠」。

作品の詳細については、またおいおいご紹介するとしましょう。

 

ただ、このシネマ歌舞伎、一つ欠点があって、

「上映期間が短い」

今回の作品も、20日(土)から26日(金)までと、一週間しか上映されません。

また1日の上映回数も、ほぼ午前中に集中しており、夕方はまったく上映されません。

 

これでは、より多くの人(特に昼間は仕事のサラリーマン)が歌舞伎に親しむ機会は、ほとんどないと言っていいでしょう。

 

「歌舞伎なんて、年寄しか見ないだろう」と思っているのか。

しかし、本当にそんな考えなら、いつまでたっても歌舞伎ファンのすそ野は広がらないと思うのですが。

 

このあたりのクレームは、当然松竹にも届いているはずなのですが、どうなんでしょうねえ・・・

古典芸能との出逢い

私が古典芸能に惹かれるようになったのは、今から20年ちょっと前の大学生の時。

 

毎年1月2日に初日を迎える歌舞伎座の初春公演が、教育テレビ(現Eテレ)で生中継されるのだが、偶然チャンネルを合わせて見たのが始まりでした。

 

むろん公演すべてが中継されるわけではなく、中継予定の時間とタイミングの合う舞台の様子が放送されるわけです。

 

その時、放送されていたのは「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」という演目で、歌舞伎の演目の中では王道と言ってもいい演目の一つです。

 

主役の「花川戸の助六(はなかわどのすけろく)」を演じていたのは、今は亡き十二世市川團十郎丈。

その兄「白酒売り 実は曾我十郎(しらざけうり じつはそがのじゅうろう)」を演じていたのが、こちらも今は亡き十八世中村勘三郎丈。(当時は「五代目中村勘九郎」を名乗ってました)

 

その時は「ほう、歌舞伎やってるわ。」「これが歌舞伎か」というくらいのニュアンスでボーっと見ていたのですが、途中で目から鱗のビックリするような演出があったのです。

それは、典型的な古典演目である「助六由縁江戸桜」の中で、アドリブが展開されたことです。

 

歌舞伎ファンの方なら「なんだ、そんなことか」と言われるでしょうが、当時の私には「歌舞伎=大仰で古臭いもの」という固定観念があったので、歌舞伎の舞台でアドリブが入ること自体が、大変な衝撃だったのです。

 

後に歌舞伎を知っていくにつれて、歌舞伎の演目の中でも、特に古典作品の中で悪ノリしない程度に面白いアドリブを入れられるかどうかが、なかなか技術のいることだと知って、それもまた歌舞伎の魅力だと分かるようになりました。

しかし繰り返しになりますが、その時は、それは大変衝撃的でした。

 

人間、何がきっかけで今まで興味がなかったものに惹かれるようになるか分かりません。

 

このブログを見て、歌舞伎をはじめとする古典芸能に興味を持っていただいたり、少しかじってはいたけど、もっといろいろ知ることができたということになれば幸いと思いながら、つらつらと綴っていきたいと思います。